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「縁起でもない話をしよう会・第40回東大阪プロジェクト」を開催しました

「縁起でもない話をしよう会」とは、医療や福祉に関わる方々と地元の人々が参加する、鹿児島にある妙行寺さんが発案された地域交流イベントです。

普段はあえて口には出さない「縁起でもない話」をみんなで語り合い、これからの人生をいかに生ききるかを考えるきっかけ作りの一つとして、東大阪プロジェクトでも継続的に開催しています。

今回のテーマは、「ブッダのショートストーリー ~深い教えをより理解するための譬喩(ひゆ)表現」

東大阪プロジェクトのコアメンバーである光教寺住職 神舘 広昭(みたち・こうしょう)さんが話題提供をしてくださいました。

仏教の比喩に学ぶ「縁起でもない話」の尊さ

私は東大阪市の浄土真宗のお寺の住職を務めています。大学では真宗学を学びながらカウンセリングを勉強し、ターミナルケアやホスピスに関心を持つようになりました。当時は「仏教ホスピス」と呼ばれていましたが、後に「ビハーラ」(僧院や聖者の安息所を意味するサンスクリット語)という言葉が使われるようになりました。

川邉先生との出会いは2020年に、母が在宅緩和ケアでお世話になったときにさかのぼります。大阪国際がんセンターでの治療後、自宅に戻ってからの2週間で母は往生しました。臨終の前日、母の意識がなくなり血圧が下がっていく中、往診に来てくださった先生が「飛行機が静かに着陸できるように見守りましょう」と言ってくださったことが強く印象に残っています。比喩を使うことで、私たちなりに想像ができるわけです。

比喩・譬喩の力 – 難解な教えを身近にする

仏教には深い教えを理解するための比喩、たとえ話があります。難解な仏教の真理を身近な物語やイメージで説明することで、理解を助け、感情に訴え、記憶に残りやすくします。たとえばお釈迦様は「ヒマラヤの山が全部金貨に変わっても、たった一人の欲も満たすことができない」と説かれました。このような簡潔なたとえが聞いた人の心に深く刻まれるのです。

今回は二つの重要な比喩についてお話しします。「盲亀浮木(もうきふぼく)のたとえ」と「黒白二鼠(こくびゃくにそ)のたとえ」です。

盲亀浮木のたとえ – 人間として生まれることの稀有さ

「盲亀浮木」は目の見えない亀と浮いている木を意味します。この比喩は人間として生まれることがいかに稀有で貴重なことかを教えます。

広大な大海に一本の木が浮かんでいて、その木には穴が開いています。海の底には一匹の目の不自由な老海亀が住んでおり、百年に一度だけ呼吸のために海面に顔を出します。この亀が海面に顔を出したとき、ちょうど浮木の穴に首を突っ込むことがありえるでしょうか? ありえない? 非常に稀なことですが、長い年月の間には、そのような偶然が重なることもあるかもしれません。

人間として生まれることはそれほど稀有なことだと、お釈迦様は教えています。この出会いの困難さは、人として命をいただくことの困難さ、お釈迦様の尊い教えに出会うことの困難さ、そして人と人の出会いがいかに貴重かを示しています。雲の上から糸を垂らして地上の針の穴に通すようなものだとも表現されます。

樹木希林さんは「お釈迦さんが人間として生まれることは極めて稀なことだと言っているのだったら、生き続けなきゃもったいない」と著書に書かれています。この教えは命の尊さ、人間として生を受けたことへの感謝、自分の存在の尊さを気づかせてくれます。

私たちの残された時間

皆さんは自分にどれくらいの時間が残されていると思いますか?平均寿命を84歳として、これを時計に例えてみます。84歳を12時間に例えると、7歳で1時間となります。私は57歳なので、時計の針は約8時を指しています。42歳の人で6時、63歳は9時、70歳は10時、77歳は11時を指している計算になります。

皆さんの時計の針は何時を指していますか? 12時まで生きられることを願いますが、それは誰にもわかりません。だからこそ、一日一日を大事にしていきたいと思います。

黒白二鼠のたとえ – 人生の危機と欲望

「黒白二鼠のたとえ」は『仏説譬喩経(ぶっせつひゆきょう)』に記されています。広い荒野を一人の旅人が歩いていると、後ろから荒れ狂った大象が追いかけてきます。旅人は必死に逃げ、古井戸を見つけます。井戸には藤つるが垂れ下がっていたので、旅人はそれを伝って降りていきます。

しかし井戸の底には大きな口を開けた大蛇がいて、旅人を飲み込もうと待ち構えています。上には大象がいて登れず、下には大蛇がいて降りられず、旅人の命は一本のつるにかかっています。さらに、つるの根元を白鼠と黒鼠が交代で絶えずかじっており、いつ切れてもおかしくない状態です。

この絶体絶命の状況で、旅人が慌ててつるを揺さぶると、根元にあった蜂の巣から甘い蜜が五滴ほど口の中に落ちてきました。旅人はその蜜の甘さに夢中になり、大象も大蛇も鼠のことも忘れて、ただ蜜が落ちてくるのを待ち望むようになりました。

この比喩の意味をお釈迦様は次のように解説されます:

  • 旅人は人生という旅をしている私たち
  • 大象は時間の流れ、人生のはかなさ
  • 藤つるは生命、寿命
  • 白鼠と黒鼠は昼と夜(過ぎていく時間)
  • 五滴の蜂蜜は食欲、睡眠欲、色欲、名誉欲、財産欲の五欲
  • 井戸の底の大蛇はいつ訪れるかわからない死の影

この物語は、私たち人間が蜂蜜の甘さという目先の快楽にまどわされ、自分の置かれている危機的状況を忘れてしまう愚かさを教えています。最高の快楽におぼれても、それは世俗の喜びで長続きせず、いつかは命が尽きることを忘れてはならないのです。

むすび – 穏やかなエンディングを共に

人生は常に変化し、私たちの持ち時間は刻一刻と減っています。それにもかかわらず、私たち人間は目の前の危機を忘れ、欲望に囚われがちです。本当に大切なものは何か、残された時間をどう使うべきかを考えることが重要です。

東大阪プロジェクトのクレド「出会うことで人が動き出し、ともに未来を変える。穏やかなエンディングをみんなで」という言葉のように、私たちは皆、稀有な存在として出会い、少しずつ歩んでいます。皆さんと共にこの道を歩めることに感謝しています。

お話しの動画と資料はこちらに

神舘さんのお話しの全編、ぜひYouTubeにてご覧ください。30分ほどです。

まとめの資料もこちらから拡大してご覧いただけます。

今回の「縁起でもない話をしよう会」にも、全国各地から50名もの皆さまにオンラインでご参加いただきました。

恒例!後半は自由に語り合う時間

縁起でもない話をしよう会では、後半は参加者のみなさんがグループに分かれて自由に語っていただく時間をとっています。

自己紹介では

「なぜ生まれてきた、その意味について」
「生まれてきた意味を考えつつ、それに対して、どれだけ残された時間があると思いますか?」

というテーマを4名1組に分かれて、自由に話し合っていただきました。

会の終了後、参加者のみなさまから感想をいただきましたので、いくつかご紹介させていただきます。

<講義の感想>
・話し方が心地良く、残りの人生(時計)の話がとてもわかりやすかった。今後、人生を考えてもらいたい人に分かりやすく話せると思えた。比喩の話が目に浮かぶように感じられ、その後の説明も分かりやすかった。
・産まれてくることいま生きていることは当たり前じゃない、自分の存在自体が尊い、そう思えました。
・本で読むなどよりもとても分かりやすい「教え」をやさしく理解できるように話していただきました。
<自由に語る会の感想>
「いつも誰かが始めてくださるのを待っていましたが今日は自分から話し始めることができました。普段しない話題をほぼ初めての方のお話しがきけてよかったです。
・なぜ生まれてきたか?と難しい内容を一人では考え及ばないところをグループワークで様々な話から考える機会を得られました。
・自分や他の人の行動原理を考えるきっかけになった。
・死を考えることが生きることを考えることに繋がるというお言葉をいただけて良かったです。」

以下のような建設的なご意見もいただきました。

・初めての参加だったのでテーマについての明確な回答ができなかったのではないかと思った。
・3人班でしたが、30分だと4-5人くらいの方が、いろいろな方の話を聞けるかと思いました。

今後、さらに活動を広げていきたいと考えています。縁起でもない話をしたことがない方、まだ参加したことがない方を大歓迎します! ぜひ次回以降、遊びに来る気持ちでご参加ください。

【今週の東大阪プロジェクト】

東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

エンドオブライフ・ケア協会設立10周年記念にてポスター発表します!

横浜でお会いできることを楽しみにしています!!

そして現地で直美さんを応援してください!

【申し込み方法】

参加を申し込む

エンドオブライフ・ケア協会設立10周年シンポジウム
時は来た!~あなたから始まるやさしさの連鎖~

主催:エンドオブライフ・ケア協会

第一部:ユニバーサル・ホスピスマインドとともに~各地からの実践報告~

・「豊かに生ききる」を当たり前に〜東大阪プロジェクトの歩み〜(大阪府東大阪市:山本直美)

第二部:わたしたちのウェルビーイング
第三部:2035年の未来予想図

日時:令和7年4月19日(土)10:00~17:30
会場:ウィリング横浜12F(京浜急行上大岡駅隣接)Zoom(午後のみ)

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