まさに満員御礼でした。
「最後の晩餐は何を食べたいですか?」
そんな普段の会話ではなかなか聞かれない1つの問いから今回の研修が始まりました。参加者はケアマネジャー、42名です。
人生会議(ACP)と聞くと、何か大層な儀式を思い浮かべられるかもしれません。またはホテルの宴会場で一族が集まって行われる相続のための話し合いをイメージする人もいるかも。
いいえ、特別な会議などではなく、日常会話の延長にあるとも私たちは考えます。
参加者からは「利用者のためはもちろん、自分自身の人生についても考える時間になった」という声が多く聞かれました。いったい、どんな研修になったのでしょうか。
法定外研修「人生会議」は募集後すぐに定員に
2026年2月7日、大阪介護支援専門員協会 東大阪西支部と、私たち東大阪プロジェクトの共催で、法定外研修を開催しました。テーマは「人生会議〜日常に一人の想いをつなぐケアマネの力〜」。講師は看護師の川邉綾香さんです。
募集開始後すぐに定員に達した研修は、ケアマネジャーを中心に42名の方が参加されました。人生会議やACPに対する専門職の関心の高さを、感じさせる結果だったのではと思います。
なお会場は、地域で「まちカフェ」を開かれているデイサービスゆめふる長田さんのご厚意でお借りしました。地域のつながりの中で開催できたことに、心より感謝申し上げます。
発表に使用した資料は、以下よりご覧いただけます。
人生会議は「特別な会議」ではない
冒頭で、「人生の最終段階の医療や療養について、考えたことがありますか?」と綾香さんが聞きました。すると、さすがは専門家たち、予想通り多くの手が挙がります。
ところが、次の質問ではその手がほとんど挙がらなくなります。
質問の内容は「そのことを家族や医療・介護の人と話したことがありますか?」というもの。
厚生労働省の調査では、最期について「考えたことがある」人は59.3%にのぼります。しかしそれを「実際に話し合ったことがある」人は、わずか2.7%。
大切だとわかっていても、言葉にして伝えられない。このギャップこそが、私たち医療者・介護者が向き合うべき大きな課題なのではないでしょうか。

現場の事例から学ぶ「人生会議」
在宅医療の現場での実例もさまざま紹介されました。
たとえば、亡くなる直前の1週間はあえて点滴をしないという選択があります。脱水症状がないのなら、点滴によって水分を多く供給することは必ずしもQOLの改善につながらないという考え方に基づきます。最期は病院のほうが安心であり、自宅で過ごすことで余命が短くなるといった「思い込み」の事例についても紹介されました。
いずれも「何が正解か」を決めることが必要なのではありません。その人が何を大切にして生きてきたのか、そしてこの後、どう生ききりたいのかに寄り添うこと、それこそが支援の本質だというメッセージをお伝えしました。
人生会議は、延命治療を決める場としてよりも、どんな時間を過ごしたいのか、誰と一緒にいたいのか、何を大切に生きてきたのか、そうしたその人の価値観を言葉にしていく対話ができれば、きっと実りのある話し合いになるはずです。
ここで少しだけ想像してみてください
もし、今日があなたにとって人生最後の食事だとしたら。あなたは何を食べたいでしょうか。誰と食べたいでしょうか。そして、どこで食べたいでしょうか。
東大阪プロジェクトのメンバーにはなじみのある質問ですが、ぜひ初めての方も、そうでない方も頭の中で食事のシーンを思い浮かべてみてください。

参加者の皆さんも自然と真剣なまなざしで考えてくれていました。
それぞれの脳裏に大切な人の顔、思い出の時間、自分が大事にしてきたものが、浮かび上がる時間です。
参加者からは、こんな感想もいただきました。
「利用者さんの人生会議を支える立場として参加しましたが、自分自身の人生についても考える時間になりました。支援者である前に、一市民として人生会議は大切だと実感しました。」
人生会議は、支援者だけでなく、それぞれ人生を生きるすべての一人ひとりが、自分の人生について考えること。また、自身が真剣に考えた経験こそ、利用者さんやご家族に寄り添う支援につながっていくのだと感じています。
会議などと身構えないでください。
少し言葉にする、少し共有する。そんな日常の会話の積み重ねが、もしもの時のご家族の迷いを、きっと減らしてくれます。
ケアマネジャーの皆さんには大きな力がある
今回の研修を通して、あらためて感じたことがあります。
ケアマネジャーの皆さんは、日常の関わりの中で本人の想いを見つけ、家族と共有し、医療や地域につなぐ、その中心にいる存在です。その一つの言葉が、ご家族の迷いを減らし、医療の方向性を整え、その人らしい最期の時間を守ります。
介護を必要とする多くの方々の生活を見つめ、支えるケアマネジャーさんだからこそ、人生会議において大きな力を発揮できると確信しています。
東大阪プロジェクトは人生会議を大切にします
東大阪プロジェクトでは、次のクレドを掲げています。
「出会うことで人が動き出し、ともに未来を変える。穏やかなエンディングをみんなで。」
医療・介護・地域がつながることで、誰もが安心して暮らし、自分らしい最期を迎えられるまちを目指しています。
これからの取り組み
今回の研修をきっかけに、大阪介護支援専門員協会 東大阪西支部とともに、法定外研修を継続的に開催していく予定です。
地域の支援者が学び合い、つながり合うことで、東大阪の地域包括ケアはさらに強くなっていくと信じています。
今回ご参加くださった皆さま、会場のゆめふる長田さん、本当にありがとうございました。
これからも「誰も一人にしない看取り」を目指し、地域の皆さまと共に歩んでいきます。

最後に「あなたの最後の晩餐は何ですか?」を読者の方々にも問いかけます。
今日ご家族や大切な人と話してみてください。その会話こそが、人生会議の最初の一歩になるかもしれません。