イベント

エッセイ(第6回)・【人生の予行演習】納棺体験ブースでの学び 神舘広昭さん 

納棺体験ブースでの学び

光教寺住職の神舘広昭です。
このたび「いのちのフィールドEXPO2025」で、納棺体験ブースをお手伝いさせていただきました。

イベントスタッフがFC大阪と東大阪プロジェクトのコラボTシャツを着る中、
私は黒色の法衣と輪袈裟を身につけ、静かに棺の前で参加者をお迎えしていました。

澄んだ音と共に始まる「卒業式の予行演習」

納棺体験では、参加者の方々に

人生の卒業式の予行演習を始めます

と声をかけ、お勤めを始めます。

澄んだキンという音が響き渡ると、棺のまわりの空気が変わっていきます。
念仏「南無阿弥陀仏」をとなえ、さらに回向句

願以此功徳 平等施一切
同発菩提心 往生安楽国

を心を込めてお勤めしました。

このお経には「この功徳がすべての人に平等に届き、皆がさとりの智慧を求め、
極楽浄土に往生できますように」という願いが込められています。

一つひとつの所作が、体験を単なるイベントではなく、静かに自分と向き合う時間へと変えていくことを願っています。

棺の中で芽生える“言葉にできない気づき”

小学生からご高齢の方まで、幅広い年代の方々がチャレンジしてくださいました。

ある参加者の方は棺から出た後、

「何かすごいわ」
と一言だけつぶやかれました。

その短い言葉には、言葉では言い表せない深い気づきが込められていたように思います。
棺の中で自分自身と出会い、特別な感情を得て、人はまた新しい一歩を踏み出すのでしょう。

その体験が、心の中に小さな種を蒔き、やがて芽が出て花開いていくことを想像すると、私自身もわくわくした気持ちになります。

闇から光へ ― 生きることの再認識

棺に入り、蓋が閉じられ、外の光が消える瞬間。
そのとき、参加者がどのような思いを抱かれるかは誰にもわかりません。

しかし、蓋が開いて「おかえりなさい」と周りの人が声をかけた瞬間、皆さんの表情が一変します。
そこには笑顔と晴れやかさがあり、まるで心のスイッチが入ったように見えました。

今回の「人生の予行演習」が、
一人でも多くの方にとって“今を生きるありがたさ”を再認識するきっかけとなったのなら、
これ以上嬉しいことはありません。

いのちに寄り添い続けるために

今回の経験を通して、これからも地域の方々とのつながりを大切にしながら、
学んだことを活かし活動を広げていきたいと強く思いました。

「いのちに寄り添う」とはどういうことか
――その意味を、改めて深く考える機会をいただけたことに心から感謝しています。

本当にありがとうございました。

担当ブース:納棺体験
光教寺住職 神舘広昭さん

最新情報

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン