東大阪プロジェクトの人気企画「まちカフェ」は、地域で暮らす方たちの生活を支えるさまざまな職種の方々が集うトークカフェイベントです。
医療や介護に関わる職種だけでなく、とくに職種の制限は設けずに、地域を支える方ならだれもが参加できます。
「まちカフェ」では懇親会も行っていて、こちらも人気です。意見交換やお悩み相談、名刺交換など自由に活用していただいています。
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第14回のまちカフェでは、レガテ薬局の進俊幸 先生・藤尾香織 先生に話題提供していただきました。テーマは「訪問薬剤指導」で、スタッフを含め42名の方にご参加いただきました。
在宅訪問を行うレガテ薬局とは
レガテ薬局は、長く製薬会社に勤めてい進さんが2022年8月に開業しました。長尾さんは進さんの大学の後輩で、管理薬剤師としてのキャリアを積んでいた経験を買われてレガテ薬局へ参画します。
病院・クリニックに隣接しないで独立した運営を行うレガテ薬局は、お二人が考える「あるべき薬局の姿」を実現しています。
a. 患者ごとにオーダーメイドで対応する
b. 薬を渡すことよりも、患者本人を中心に据える
c. 薬に情報を載せてサービスを提供する
d. 薬局に来られない高齢者などに出向いてサービスを提供する
このような理想を実現できる薬局が見つからなかったので、自ら創設することを決意したそうです。
藤尾さんも、いわゆる門前薬局に長く勤めていたため、「うちの患者さん」と言い切れないもどかしさを感じていました。また自身の家族の在宅医療経験で得た知識や気づきを、仕事に活かすことで地域の役に立ちたいと考えました。
薬剤師をもっと活用してほしい
在宅ケアの世界では、「薬剤師をもっと活用しよう」という新しい動きが少しずつ広がっています。
在宅薬剤師の存在によって、患者さんが安心できるのは言うまでもないかと思います。
- 薬の配達:自宅に薬を届けてもらえる。
- 服薬管理:適切な服薬スケジュールの管理と指導を受けられる。
- 飲み合わせの確認:複数の薬の相互作用や副作用のリスクを軽減できる。
- 残薬整理:不要な薬の整理や適切な廃棄方法の指導を受けられる。
- 治療や療養への集中:薬の管理が整理されることで、本来の治療や療養に集中できる。
- 精神的負担の軽減:不要な薬を整理することで、精神的な負担が軽減される。
こうした具体的なメリットを提供できているはずです。
「さらに在宅医療・ケアを支えるその他の職種のみなさんにとっても安心できるはずだ」と、進さんは指摘します。
- 薬に関する業務を薬剤師に任せ、自身の専門業務により集中
- 薬の確認や管理にかかる時間と手間が削減される
- 薬の取り扱いや廃棄の負担軽減
- 薬剤費の削減: 薬剤師の介入により、不要な薬の処方を減らし、薬剤費の削減につながる可能性がある。
こういった大きなプラスアルファの効果が期待できます。
従来型の「薬を渡すだけ」薬剤師の限界
レガテ薬局とは対照的に、まだ従来型の調剤薬局では「薬をできるだけ早く用意して手渡すだけの薬剤師」がいることも指摘されています。
多くの薬局が病院・クリニックの横に立地していることから、患者さんにとっては診察後すぐに薬がもらえることを期待します。薬剤師にとって心理的な圧力となっているのは間違いないでしょう。多くの薬局では業務効率が重視され、コミュニケーションよりもスピードが優先される運営方針も拍車をかけているように思われます。
薬剤師の本来あるべき姿を取り戻したい。これがレガテ薬局の原動力にもなっています。
残薬問題に取り組む
残薬問題は、在宅医療に薬剤師が関われば、ただちに解決するほど簡単ではありません。しかしレガテ薬局では、以下のような取り組みを地道に行っていくことが重要だと考えています。
使用期限の管理
- 開封後1ヶ月経ったものは廃棄を推奨
- 飲み薬は薬の袋に記載されている日から1年を目安に廃棄を検討
- ただし、災害や受診困難な状況に備えて、常用薬は最低1週間分は保持する
- 薬の使用期限は製薬会社の工場で作られた時点からカウントされることを説明
- 患者が薬局で受け取った時点が使用期限のスタートではないことを周知する
薬局側の対応
- 患者や家族の希望に応じて、一包化や日付・名前の記載など、個別のニーズに合わせた調剤サービスを提供
- 薬局に来られない患者のために、薬剤師が自宅を訪問してサービスを提供
- 医療機関の診療時間に左右されず、患者の都合に合わせて訪問する
- 薬剤師が直接患者に不要な薬の廃棄を提案し、整理を手伝う
残薬の問題は医療費の無駄につながる、社会全体の問題として認識を促していくことも大切です。
今回も動画で、お二人のお話しをご覧いただけます。倍速で10分ほどですので、ぜひ最後までご視聴ください。
恒例の懇親会で新たなつながりが生まれます
毎回、楽しみに参加してくださる方が多い懇親会では、次々に新たな出会いが生まれています。
私たち東大阪プロジェクトのクレド(行動指針)では「出会うことで人が動き出し、ともに未来を変える。穏やかなエンディングをみんなで」を掲げていますが、この「人が動き出す」ことが新たな未来を生み出すことを実感しています。
毎回、このように輪が着実に広がっていくことを非常にうれしく思っています。
感想の紹介
ご参加された方の感想を紹介します。(一部抜粋)
・患者さんの都合に合わせての訪問がすごく魅力的です。多くの薬局は外来と施設、在宅と追われて、薬局都合の訪問、また服薬指導にかけられる時間も少ないなか、患者さんとの時間をとることで、服薬状況だけに目を向けるだけでなく、背景、性格、生活リズムなども把握でき、隠れた服薬の癖などにも気づくことができると思いました。
・ケアマネをしていた時に、そのような薬局があれば良かったなと思いましたので、今後、周りのケアマネに周知して行きたいです。
・同じ包括の方と知り合うことができました。同じ業務のようでも市町村の違いによって互いの良い工夫を共有できたらいいなと思いました。
・貴重な交流の場を頂きありがとうございました。様々な医療関係の方、サービスを展開されている方のお話を伺い、視野を広げることに繋がりそうです。
・顔の見える関係づくりの大事を痛感しました。先ずは自分の居住地の自治会レベルから始めようと思いました。
・皆さんの明るい積極的な様子を見て、自分も職業上ではなく地元の住民どうしの関係を地道に広げていこうと思いました。
・一人でも多くの方とお知り合いになることで、何かあった時に相談しやすい関係性を創れるのがうれしいです。また、話題提供していただくことで、知らないことを知る意欲につながるのもありがたいです。
一方でこのようなご意見もいただいたので、今後に活かしていきたいと思います
・地元ではないので、会場に正しくたどり着くことができるのかが心配でした。入口が最初わかりませんでした。
次回(第20回)は2024年11月14日にさくらテラス(近江堂)にて開催します。
ぜひ、ご参加ください!
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東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>>ぜひご参加ください<<
お知らせ【医療デザインサミット2024(参加有料)】が開催されます
私たち東大阪プロジェクトについての発表も行います。今年は横浜での開催、ぜひ応援にいらしてください!
開催趣旨:医療デザインサミット2024は、排泄ケアをテーマに、医療、デザイン、テクノロジーが交差する革新的なプログラムを通じて、新たな可能性を探求します。排泄は人の尊厳に直結する重要なテーマであり、私たちは現場の声に耳を傾け、多職種のプロフェッショナルと共に、未来を共創します。本サミットは、対話を通じて深い知恵を引き出し、愛と尊厳に満ちた社会を実現するための重要な一歩となる場です。
主催団体:一般社団法人 日本医療デザインセンター
開催日時:11/9(土)10:00〜18:30 医療デザインサミット2024
11/12(火)20:00〜21:30 特別トークセッション[LIVE配信]江角 悠太
11/14(木)20:00〜21:30 特別トークセッション[LIVE配信]久保田 千代美
形式:現地の会場にて開催。また、チケット購入者向けに、11月〜12月でアーカイブを先行配信いたします。
開催場所:横浜市立大学 みなとみらいサテライトキャンパス