まちカフェは、地域で暮らす方々の生活を支える皆さまが集うトークカフェイベントです。
集まるのは、医療や介護に関わる職種だけではありません。職種の制限なく、地域を支える方ならだれもが参加対象になります。
「まちカフェ」では毎回懇親会も人気で、意見交換やお悩み相談、名刺交換など自由に活用していただいています。
第13回まちカフェでは、ダブルケア東大阪代表 荒井美紀さんに話題提供していただきました。
ダブルケアとは、育児と家族の介護など、複数のケアが重なる状態を指します。
子育てだけでも大変、介護だけでも大変。それが両方いっぺんにきたらどうなるでしょう。
ダブルケアでも笑顔で過ごすにはどうすればいいか、一緒に考えてみましょう!というのが荒井さんのお話しのテーマです。
今回も50名(スタッフ含む)にご参加いただきました! いつもたくさんのご参加をありがとうございます。
ダブルケアを行う人は全国に29万人
今回は「ダブルケア」がテーマです。
講師自身のダブルケアの経験から、2022年に「ダブルケア東大阪」を立ち上げて活動を始めました。ダブルケアの周知啓発活動や、当事者の交流会「ダブルケアカフェ」を定期的に開催しています。
普段は薬局で事務のパートをしています、場所はかわべクリニックさんの1駅隣。ご近所ですね。だから川邉先生の書かれた処方箋を持ってこられる患者さんも結構いらっしゃいます。生まれも育ちも東大阪で、夫と小3の息子と3人で地元のラグビーチーム「花園近鉄ライナーズ」のファンです。
さて、ダブルケアは、13年前の東日本大震災をきっかけに作られた言葉です。ダブルケア、育児と介護など複数の介護を同時に行う人は、ダブルケアラーと呼びます。
2024年、毎日新聞の調査によると、ダブルケアラーの人数は、全国で約29万人にのぼります。うち9割が30〜40代の働き盛りで、3分の2が女性ということで負担の偏りが見られました。
ちなみに東大阪市内にも1,000〜1,500人程度のダブルケアラーがいると推定されます。
昔から、子育てしながら介護するというケースはありました。しかしダブルケアラーの増加の要因には、晩婚化、晩産化、さらに少子高齢化や核家族化などが指摘されています。
ですね、子供を産む年齢どんどん上がってきてますよねそうなると親や家族の年齢もその分上がってきちゃいますよね。子育てをする時期と介護をする時期が重なってしまうケースが増えてきているということです。ただ、これあくまでも要因の一つです。
若い方が減ってきたことで、家庭内でのケアの担い手が減ってしまう、1人の家族に負担が集中してしまうと言われています。
ヤングケアラーとダブルケアラーには深い関連
ヤングケアラーという言葉もご存知かと思います。ヤングケアラーとダブルケアには、深い関連があり、ヤングケアラーの親はダブルケアであるケースがあると言われています。
お子さんが日中忙しいご両親に代わって、介護が必要な家族の世話や家事をしているとします。両親が帰宅すると今度は、子ども世話と介護が必要になります。この状態はまさにダブルケアです。
またヤングケアラーの方が、介護を続けながら成人し、その後結婚・出産を経てダブルケアになるパターンもあると言われています。こうしたダブルケアは、今後さらに増えて深刻な社会問題になるだろうと言われています。
ダブルケアの事例紹介
ここからはダブルケアの事例を紹介します。実際には、悩みごとも困りごとも人それぞれです。
20代女性が、年の差婚で20歳年上だった夫と結婚。その時点で義理の両親はすでに80代でした。義父はまもなく亡くなりましたが、義母は夫を亡くしたショックとコロナ禍の影響で認知症の症状が進んでしまいます。夫婦で相談の結果、義母を自宅に引き取り同居介護がスタートしましたが共働きだったので2人のお子さんは保育所に、お母さんはデイサービスに預けることになります。お子さんは、どちらもオムツが必要な年代で、さらに義母もリハビリパンツを使用していたため、計3人分のオムツパックを抱えていたら、お店の人にびっくりされたそうです。
ご両親はすでに亡くなっていて、夫のおじいちゃんとおばあちゃん、そして2歳の男の子を育てながらの女性。肺がんになったおじいちゃんを、自宅で看取りもされたそうです。おばあちゃんは認知症で家から姿を消してしまうことがあり、そのたびに小さなお子さんを手を引いて探し回った経験もあるそうです。
次は、子どもを授かる1年前に実の父に胃がんが見つかり抗がん剤治療が始まったというケース。母はすでに亡く一人っ子だった女性は「お父さんに1人暮らしを続けさせられない」と、夫とともに実家に移り住みました。通院や抗がん剤治療のサポートによって体調が落ち着いてきたところ、妊娠が判明。「孫が生まれたらもっと元気になるやろ。ほんなら4人で楽しく元気に暮らしていけるんちゃうか」と楽観視していたが、出産後まもなく父の体調が悪化し、抗がん剤治療の中止告知を受けます。結局、亡くなるまで3ヶ月半でしたが、別の病気が見つかり、入院手術が必要だと言われます。どこに行きたいか、どう過ごしたいかと聞くと「家に帰りたい」とのことだったので、在宅医療の環境を整えて、訪問看護師さんにも毎日来てもらいました。しかし衰弱が進み、歩けなくなってしまい最終的には看取りもできる老人ホームで最期を過ごしてもらいました。
このように、100人いれば100通りのダブルケアの形があると言われています。悩み事も困りごとも人それぞれです。
・何よりも精神的にしんどい
・家事がしんどい
・体力的にしんどい
ダブルケア に直面すると仕事を辞める方が全体の1割いるのも事実です。また、子どもと家族のどちらの世話も十分にできない悩みも多いものです。
「家族の世話をするのは当たり前のことなのに…」これから家族がどうなるか不安なのに、自分で抱え込んでしまう方、助けてと声を上げる余裕もない方もたくさんいらっしゃいます。
縦割り行政の弊害も指摘されていて、子育て、介護、障害と、行政の管轄はすべて異なるために、子育て担当の部署にダブルケアの相談をすると「介護の部署にも行ってほしい」とたらい回しにされることが少なくないようです。
ダブルケアの経験者だからできること
これからは、ダブルケアの大変さを伝え支援の必要性を訴えていかなければならないと感じています。
ただし「辛いこと」「苦しいこと」ばかりを伝えたいのではありません。
ダブルケアを頑張ったから家族と一緒に過ごせた、楽しい思い出ができてよかったというプラスの面も伝えていきたいと思います。
今も、皆さんの身近にもダブルケアラーがいるかもしれません。これからも増えると思います。そのときに「ダブルケア を選んでよかった」と思えるには、ダブルケアラーに優しい地域社会づくりが大事だと思います。
現在、ダブルケア を直接支援する制度、システムはないので、既存のサービスを組み合わせ、その家にあった形でやりくりしているのが実態です。
ぜひダブルケアラーの良き理解者になってください。また「ダブルケア 東大阪」の存在も伝えてください。
今日のまちカフェのように「声かけ、顔の見える関係」から始まることがあります。また、ダブルケアになる前に人生会議(ACP)に取り組めば、大切な家族のかなえてほしいことも理解して、準備しておけます。
※お話しの詳細はぜひ以下の動画をご覧ください!
恒例の懇親会で新しい出会い
毎回、楽しみに参加してくださる方が多い懇親会では、次々に新たな出会いが生まれています。
私たち東大阪プロジェクトのクレド(行動指針)では「出会うことで人が動き出し、ともに未来を変える。穏やかなエンディングをみんなで」を掲げていますが、この「人が動き出す」ことが新たな未来を生み出すことを実感しています。
毎回、このように輪が着実に広がっていくことを非常にうれしく思っています。
介護エンタテイナーの石田さんも大活躍!
今回もあっという間にお開きの時間を迎えました。
最後にご参加された方の感想を紹介します。
【感想】(一部抜粋)
・自分がダブルケアだと知らず、1人で抱え込んでいる人がいること、縦割り行政ではなかなか踏み込めない現状があること。そこに何かできることはないか、とても考えさせられるお話でした。
・ダブル、トリプルケアの話も含めて、現実的に困っている人の支援が必要な現場の声を聴くことができました。
・ダブルケアラーについて事例も含めて具体的な内容もあり、理解しやすかったです。
・ダブルケア荒井さん、介護エンタテナー石田さんお二人のお話もとても勉強になりました。そしてやはり交流会は、異業種の方と、お話できる貴重な時間でもあり、とても楽しい時間でした。
・色んな職種の方と知り合える機会はなかなかないので参加してとても良かったです。
・参加されている方は、東大阪プロジェクトの活動に同じベクトルを感じ心地よい時間となっています。
・会全体の雰囲気も心地よく、肩肘張らずに受け止めてくれる感じがして「初めまして」の方ともすっと馴染めるのは、主催されている皆さんの積み上げてきた時間がそうさせているのだと思います。参加してよかったです。
次回に向けては、以下のような建設的なご意見も活かしたいと思います。
・あまりにも多数の参加者で、それぞれの方とわずかな時間しか交流できず、少し物足りなさも感じました。
・お話したい方が何人かいましたが、残念ながら話せずに終わった方もいたので、もう少し時間がほしかったです。
次回(第16回)は2024年7月11日に長瀬さくらテラス団地にて開催します。
ぜひ、ご参加ください!
※クリックするとファイルが拡大表示されます
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>ぜひご参加ください<<
【お知らせ・まちカフェ・第16回(参加費有料)】
リアルでも顔の見える関係を築きませんか?
共催:地域包括支援センターくつろぎ・訪問看護ステーションリール
【申し込み】
参加を申し込む暮らしを支える皆さま(医療・介護・福祉に限らず)が集うトークカフェイベントです。
懇親会もあり、意見交換、お悩み相談、名刺交換など自由にお話しいただけます。
話題提供:
ボトックス注射って何?美容から医療までのすごい効果!~整形外科領域編~
たかやまクリニック 高山太邦 先生
日時:令和6年7月11日(木)18:30~20:00
(途中参加、退席可・お早めの来場をお願いいたします)
場所:OPH長瀬さくらテラス団地
東大阪市近江堂3-1-6(コインパーキング・有料)
近鉄大阪線長瀬駅徒歩12分
定員:30名程度
対象:どなたさまでも(職種は問いません)
会費:2000円 コーヒー+お土産(生食パン1斤付き)
生食パン天空(Café & Bakery Ciel〜しえる〜)