「縁起でもない話をしよう会」とは、医療や福祉に関わる方々と地元の人々が参加する、鹿児島にある妙行寺さんが発案された地域交流イベントです。
普段はあえて口には出さない「縁起でもない話」をみんなで語り合い、これからの人生をいかに生ききるかを考えるきっかけ作りの一つとして、東大阪プロジェクトでも継続的に開催しています。
今回のテーマは「おむつ」
日本で一番のおむつ専門家である八木大志先生をお招きして「おむつは自立支援の福祉用具」をタイトルに話題提供していただきました。
<八木先生の略歴>
理学療法士として4年間の経験を積んだ後、他業種に転職する。
転職先企業で紙おむつの給付事業に約2年間携わる。
2016年に大阪府で紙おむつの宅配業を開業する。
おむつ情報局での無料のおむつ勉強会のお申込者数(自主開催)は2021年から2024年で約8000名。
現在は日本福祉医療ファッション協会の理事として、大阪・関西万博でのおむつコレクションに挑戦中。
お話しの概要は、以下のとおりです。
・おむつの種類や選び方などの基本的な内容
・少しマニアックなおむつの情報紹介
おむつの課題と解決策
町中でおむつ交換できる場所と言えば、多機能トイレが思い浮かぶと思います。しかしながら、設置義務は超大規模な施設に限られており、施設数は不足しています。
そもそもおむつ交換できるところがなければ、安心して外出ができなくて、行動は制限されてしまいます。
パンツ型であっても、ズボンやおむつを脱ぐためには靴を脱ぐ必要があり、衛生的ではない環境で足を床につけるのは抵抗が多いもの。これも外出を遠ざける要因となっています。
おむつ使用の現状と課題
八木さんによると、日本でおむつを使用している人が現在330万人おり、2040年には522万人に増加すると予測されていると語っていました。また、2030年には一般家庭ゴミの約7%がおむつになるとの予測もあります。
しかし、おむつについて話題にすることをタブー視する傾向があり、これが適切な対応の妨げになっているとのことでした。
おむつ使用に関する重要な考え方
八木さんは、おむつの使用は単なる失禁対策ではなく、自立支援のための福祉用具として捉えるべきだと強調していました。例えば、パッドを使用して外出できる人の方が、漏れを心配して外出できない人よりも自立度が高いという考え方を示されていました。また、おむつ使用を安易に選択すべきではないものの、適切に使用すれば生活の質を向上させる重要なツールになると説明されていました。
おむつ選定の具体的なポイント
八木さんは、おむつ選定には細かな配慮が必要だと説明していました。特に以下の点を重視すべきとのこと。
- テープ型は常時ベッドで排泄する方向けで、トイレに行ける方はパンツ型が適切
- サイズ測定は重要で、テープ型はウエスト、パンツ型はヒップで測る
- 吸収量は実測して選定する必要がある
- 通気性や肌への影響も考慮すべき
今後の展望と取り組み
八木さんの所属する一般社団法人 日本福祉医療ファッション協会では、2025年に開幕する大阪万博において「O-MU-TSU WORLD EXPO 2025」を開催します。
会場:EXPO ホール「シャインハット」
日時:2025年6月24日(火)
会場規模:1900人
これには7社のおむつメーカーが参加し、おむつのイメージを変えることを目指すイベントとのことです。また、公共施設でのユニバーサルシートの設置など、インフラ整備の重要性も指摘されていました。
特に、イギリスなど海外の先進的な取り組みを参考にしながら、日本でも環境整備を進めていく必要があると語っていました。
まとめ
おむつ情報局の管理者を務める八木さんの話は、おむつ専門家にふさわしいものでした。医療や介護者でも知らないおむつの機能や知識をポジティブに披露してくれました。
そして印象的なのは、実践的な解決に向けて積極的に行動を起こす実行力の持ち主だということです。地域の商店街でトイレの美化活動を行ったり、子供たちが参加できるトイレ関連のゲームを企画したり、さらには行政に対して不適切な給付制度の改善を提言したりと、私たち東大阪プロジェクトも負けていられないほどの行動力です。
「誰が洗濯するのか」といった現場の実務的な課題にも目配りができる実践的な思考をお持ちで、医療介護の現場で働く人々やおむつを使用する方々の立場に立って物事を考える姿勢にも感動しました。
来る大阪万博、さらにその先の活動を私たちも応援したいと思います。
なお八木さんとともに、私たち東大阪プロジェクトが一緒に登壇するBOCフォーラムのご案内を以下で紹介しています。
ぜひご参加ください。
【お知らせ】
BOCフォーラム2024 in 大阪(参加費有料)
“命”をテーマにした究極のおもてなしを学ぶ
「命を守り、支える医療・介護の未来」をテーマに、介護士、医療従事者、福祉関係者を対象にしたフォーラムです。私たちは、医療・介護・福祉分野における最新の知識を共有し、活発な交流を通じて、高齢者ケアの質を高める新しいコミュニティの創造を目指しています。
主催:訪問看護支援協会
【申し込み】
参加を申し込む『命』をテーマにしたゲストによる心揺さぶる講演と未来の口腔ケアについて語ります。
話題提供:
BOCプロバイダー・長縄拓哉氏「いのち救う口腔ケアの未来」
東大阪プロジェクト・川邉綾香氏、川邉正和氏「いのちと向き合うエンドオブライフ・ケア」
(一社)日本福祉医療ファッション協会・平林景氏、八木大志氏「おむつでいのち輝く未来社会のデザイン」
大人の寺子屋縁かいな・上田比呂志氏「いのち輝かせるおもてなしの本質」
日時:令和6年12月14日(土)13:00~17:00
場所:グラングリーン大阪(北館JAM BASE)
定員:100名
参加費:5,000円