先日もご報告したとおり、日本在宅医療連合学会大会で東大阪プロジェクトに関するシンポジウムを行いました。
会場には、東大阪プロジェクトの仲間たちも多く駆けつけてくれました。
今回は、大石美幸さんがレポートを寄せてくれましたので、ご紹介したいと思います。
会場の期待が高まりスタートへ
今回のシンポジウムが行われたのは、7月21日(日)でした。幕張メッセ国際会議場の1室には、約120席のいすが並べられ、会場の前方では川邉先生をはじめとした演者のみなさんがあまり緊張を感じさせない面持ちで集結しています。スタートは午後12時40分ですが、その10分前からぽつぽつと人が集まり始まるのをみるとドキドキ感が高まっていきます。
そして気がつけば会場は満席に。立ち見が出るほどになり、この講演を楽しみにどきどき・わくわく待っていた方たちの存在で、一気に会場の温度が上がるのを感じました。
1:かわべクリニックの患者さんを主語にした医療と東大阪プロジェクト
座長の蒲原さんによる演者の紹介につづいて、まずかわべクリニックの川邉正和先生と川邉綾香さんのご夫妻からのお話でスタートします。
今までに出会われた入院中の患者様のお話では「がん治療を始める前に花嫁姿を撮影しておきたい」という彼女の気持ちに寄り添われ、病室に撮影スタッフを招いたエピソードが紹介されると思わず涙がこぼれました。
そこから、多職種連携の必要性を感じて、真の地域包括ケアシステムを作ろうという東大阪プロジェクトの活動へ話が展開し、さらに今後の活動のお話がありました。「エンディングスタジアム」の構想はこれまでにないスケールのお話しでした。
2:「在宅診療元年」から今まで・いとうまもる診療所
つづいては、大阪府泉南郡のいとうまもる診療所の伊藤守先生による発表です。2010年に始まった在宅診療元年からの今までの軌跡や、訪問看護師やケアマネジャーとの連携に失敗したご自身の出来事を加えながらのお話でした。ACP(人生会議)の重要さが盛んに話題となる中、支えてくれる近隣の方も居たのに、その人が法的な支援者となれず、本人が望む場所での療養が出来なかったお話はとても印象的でした。
同じ伊藤先生の法人で、訪問看護師として活躍されている加藤裕子さんからは、家族に迷惑をかけたくないからと入院を希望していた末期がんの患者さんを自宅でお看取りしたエピソードが紹介されました。コロナの影響でもし妻が入院したら、二度と面会さえできないのではないかと危惧していたご主人からは、最後まで家にいてほしいとの希望が尊重されて抗がん剤の投与を中止したという話でした。本人や家族の意志が確認できていたからこその成果でしょう。
また伊藤先生からは、これからの課題提案と共に、今後活躍していかれる若い先生に向けての言葉にもお人柄が現れていて、もっと聴きたいと思う内容でした。
3:相模原にもできる!広瀬病院の挑戦
3人目は在宅側ではなく病院の立場を改革しようとしている廣瀬憲一先生のお話でした。病院経営を行いながら、かつ在宅へ繋ぐ時の想いを熱く語られていました。
「東大阪にできて相模原にできないことがない」をコンセプトに、患者さんが望む療養場所で過ごせるために、病院が取り組むべき事や意識改革が必要な事を学びました。
4:楽しいをモットーに輪を広げる訪問看護ステーションここな
最後のシンポジストは訪問看護ステーションここなさん。「訪問看護を頼むなら『ここな』」から名付けられたステーションは現在堺市まで展開され、事業を拡大されています。「楽しむ」事をモットーに訪問する様子や、職員やその家族も楽しめるイベントを実践されているお話をされました。
訪問看護であっても家族の一員に近い立場に立ち、思いに寄り添う事を大切にされてきた、ここなさんが川邉夫妻と出会ったのは必然だったのでしょう。東大阪プロジェクトの活動に加わって、今まさに南大阪の地で南大阪プロジェクトを始めるお話まで繋がっていきます。本当に今後の活躍がそれぞれに楽しみな発表でした。
後半のQ&Aでは「超・地域包括ケアシステム」に必要な内容が
後半は、シンポジストたちによるQ&Aタイムとなり、なぜ今「超・地域包括ケアシステムを実践しようとしているのか?」について、9つの質問事項の中からそれぞれの熱い思いを語る時間となり、あっという間の90分が終わりました。
隠し事なく、各地での取り組みや考えを披露され、受講している多くの方がうなずいたり、内容に驚いたりされているようでした。
後日YouTubeでの配信も予定されていますので、詳細が気になる方は更新の情報をこちらのホームページでチェックしていてください。
大石さんによるシンポジウムレポートの前半はここまで。 後半は、大石さんの感想を中心に続編をお届けしますので、どうぞお楽しみに!